研究概要 |
・グリオーマ血管新生おけるhypoxia inducible factor-α (HIF-α)とangiopoietin (Ang)の役割。 1.HIF1αはGBM, AAではLGAに比べて腫瘍細胞の核に有意に高くみられ、VEGF濃度、MIB-11陽性率、p53陽性率、血管密度、血管面積と有意な相関がみられた。 2.HIF2αは腫瘍細胞質、腫瘍血管内皮細胞にみられた。 3.Ang1は腫瘍細胞質にみられたがGBM, AA, LGAの間に発現差はみられなかった。 4.Ang2は腫瘍細胞質、腫瘍血管内皮細胞に発現がみられた。Ang2の腫瘍発現はVEGF濃度と逆相関があり、陽性例の生存期間は36ヶ月、陰性例は20ヶ月と予後良好因子であった。 5.HIF1αとAng2はVEGF発現と関連してグリオーマの血管新生・臨床予後を調節し分子標的となりうる。 ・CPT-11の抗血管新生作用・グリオーマの増殖抑制の機序。 1.CPT-11のグリオーマ細胞(GL261,U87,U251)でのIC_<50>は38,5,30μM、内皮細胞(TE1,CPAE)でのIC_<50>は0.001,0.041μMであり、腫瘍細胞に比べ強い内皮細胞増殖抑制効果がみられた。 2.CPT-11は濃度、時間依存的にグリオーマ細胞のHIF-1αの蛋白、mRNA発現を抑制し、さらにVEGF蛋白発現を抑制した。 3.CPT-11はU87グリオーマの皮下腫瘍の増殖を有意に抑制し、生存率を延長した。CPT-11治療群ではcontrol群に比べて腫瘍内血管数の低下、VEGF濃度低下を認めた。 4.CPT-11は腫瘍細胞のHIF-1,VEGFの発現抑制および強力な血管内皮細胞増殖抑制効果によりグリオーマの血管新生・増殖を抑制する。 以上の結果に基づきhypoxiaを標的とした悪性グリオーマの抗血管新生療法の基礎から臨床につながる計画を立てている。
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