研究概要 |
●悪性グリオーマに対するHIF-1およびVEGFを標的とした抗血管新生療法 1.CPT-11の血管新生抑制効果:CPT-11がグリオーマ細胞のHIF-1およびVEGFの発現を抑制し、血管内皮細胞の増殖を選択的に抑制するという前年度の結果に加えて、in vitroでCPT-11は血管内皮細胞の管腔形成も0.01μMで抑制した。他の抗腫瘍剤(ACNU, etoposide, cisplatin)では管腔形成の抑制は100μMでもみられなかった。 2.CPT-11のin vivoでの抗腫瘍効果:CPT-11のこれらの強い血管新生抑制作用から、SCIDマウスを用いたヒトグリオーマの皮下腫瘍モデルでCPT-11の抗腫瘍効果および血管新生抑制効果を評価した。CPT-11の投与方法は中等量を短期間に投与(10mg/kg[A],40mg/kg[B]の腹腔内投与をday1-5,day8-12)と低容量持続投与(1mg/kg[C],4mg/kg[D]の腹腔内投与を21日間)に分けて行なった。コントロールに比べCPT-11投与ではいずれの群でも腫瘍抑制効果がみられた。抑制効果はA=B=D>Cであった。CPT-11投与群の腫瘍組織ではVEGFの発現、血管密度が全群とも有意に低かった。CPT-11の血管新生抑制スケジュール(低用量持続投与)によるグリオーマの増殖抑制効果を明らかにした。 3.HIF-1発現の抑制効果:2-methoxyestradiolおよびYC1についてグリオーマ細胞のHIF-1のmRNAおよび蛋白発現の抑制効果がみられた。 ●sFlt-1遺伝子の強制発現によるグリオーマの増殖抑制効果 グリオーマ細胞に内因性血管新生抑制因子であるsFlt-1遺伝子をリポフェクション法で強制発現させた。細胞形態、増殖能力に違いは見られなかった。マウス皮下腫瘍での増殖はコントロールに比べて抑制が見られたが有意な違いは見られなかった。 ●漢方薬:十全大補湯(JTT)のグリオーマ増殖抑制および血管新生抑制効果 JTTの低濃度、高濃度混合飼料をマウス(若齢6週、老齢43週)に摂取させることにより、グリオーマ皮下腫瘍の増殖抑制を検討した。JTT高濃度摂取した老齢マウスで脾臓リンパ球サブセットのNK細胞比率およびNK活性が有意に増強され、腫瘍の血管面積が有意に抑制された。腫瘍の増殖能、腫瘍の増大には違いがみられなかった。JTTの老齢マウスに対する免疫賦活作用に加えて、血管新生抑制効果が明らかにされた。
|