研究概要 |
悪性グリオーマの抗血管新生療法の標的としてVEGFレセプターFlt1のうち細胞外の可溶性成分であるsoluble Flt1(sFlt1)および低酸素のマーカーであるhypoxia inducible factor 1α(HIF)に注目し、これらを用いた血管新生療法の基礎的研究を行い、臨床応用への展開を目的とした。 1.グリオーマにおけるsFlt1およびHIFの意義:グリオーマ組織のsFlt1,HIF,VEGFの発現量を定量した。VEGF/sFlt1が1以上、HIFの高発現は予後不良因子であった。 2.sFlt-1過剰発現の効果:sFlt1の遺伝子導入でsFltを過剰発現したグリオーマ細胞のマウスでの腫瘍増殖は、遺伝子導入していない腫瘍に比べて30%の抑制効果がみられた。 3.HIFを抑制するCPT-11の血管新生抑制効果:CPT-11は血管内皮細胞の増殖を選択的に抑制するとともに、グリオーマ細胞のHIFの遺伝子・蛋白発現それに続くVEGFの遺伝子・蛋白発現を著明に抑制した。 4.CPT-11の血管新生抑制スケジュールの開発:マウス皮下腫瘍モデルでCPT-11の投与方法の検討を行った。中等量短期間投与として10mg/kg(1-5,8-12日、総量100mg/kg)および40mg/kg(1-5,8-12日、総量400mg/kg)に加えて、低用量持続長期間投与として1mg/kg(1-21,29-49,57-77日、総量66mg/kg)および4mg/kg(1-21,29-49,57-77日、総量264mg/kg)を行った。低用量持続長期間投与により腫瘍抑制効果は著明であり、VEGF発現が抑制され、副作用がみられなかった。 5.漢方薬である十全大補湯の免疫賦活作用に加えて血管新生抑制作用をマウス皮下腫瘍モデルで明らかにした。 グリオーマに対するCPT-11の低用量持続長期間投与、十全大補湯の長期間投与はグリオーマのVEGF・HIFの発現、内皮細胞の増殖・管腔形成を抑制する抗血管新生療法として臨床応用が可能と考えられた。
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