研究概要 |
悪性神経膠腫細胞における血管新生因子(VEGF, TP)の発現に対するインターフェロン(IFN)の効果及びその分子作用機序について検討した。Type I(α, β)IFNとtype II(γ)IFNとも悪性神経膠腫細胞(T98G, A172, U251)の増殖を抑制したが、TPの発現(RT-PCR、Western blotによる測定)を誘導した。IFNによるTP発現の調節にはde novo蛋白合成が要らず、JAK-STAT依存性のtranscriptional activationとmRNA stabilizationの相乗効果が必要である。また、IFNに誘導されたTPの酵素活性は抗腫瘍剤である5-FUの細胞毒性を高めた。一方、T98G細胞においては、IFN-α/βとIFN-γともVEGFの発現(定量RT-PCR、ELISAによる測定)を誘導したが、A172細胞においてはIFN-γ、U251細胞においてはIFN-α/βだけがVEGFの発現を誘導した。IFNによるVEGF発現の調節にはde novo蛋白合成が必要である。興味深いことに、JAK-STATの下流に位置するp44/p42 MAPKがこの調節に部分的に関与する。以上より、in vitroでは、IFNが悪性神経膠腫細胞の成長を抑制しながら、異なった分子機序で血管新生因子であるTPやVEGFの発現を誘導することが明らかになった。IFN-βは悪性神経膠腫の臨床治療に広範に使用されているが、限界効果しかない。IFN-βの治療効果を向上させるためには、in vivo(ラット脳腫瘍定位移植モデル)における各種血管新生因子の発現に対するIFN-βの効果や血管新生抑制剤との併用によるIFN-βの抗腫瘍作用増強効果などについて更なる検討が必要である。
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