内頚動脈狭窄症を始めとする頚部主幹動脈狭窄症に対するステント留置術が急速に普及してきているが、ステント留置の際の血管壁におけるbiologicalな反応に関しては十分な基礎研究がなされているとは言えない。それを明らかにするには、形態学的変化を比較するだけでは不十分で、分子レベルでトランスクリプトーム、プロテオームの解析が必要である。そこで、本研究では、ウサギ動脈硬化モデルを用い、血管壁細胞がステント留置に対しどのような反応を示すのかを検討した。 【方法】New Zealand White Rabbitを用い、高コレステロール食負荷群、高コレステロール食負荷およびバルーン損傷を与えた群、さらにその右総頚動脈にステントを留置した群を作成した。各々より経時的に大動脈と右総頚動脈を摘出し組織学検討を行った。 【結果】バルーン損傷を行わなかった頚動脈には粥腫はほとんど形成されなかったが、大動脈では6週以降のモデルで粥腫が見られた。一方、バルーン損傷を行ったモデルでは頚動脈・大動脈とも、損傷後2週で粥腫が形成された。バルーン損傷後24週の大動脈ではFibrous Capも形成されていた。プロテオグリカンやテネイシン-C(Tn-C)は粥腫に一貫して沈着しており、マクロファージは損傷後6週間以降、粥腫に強く発現した。Tn-Cはマクロファージが集簇している箇所では沈着が弱く、その管腔側に非常に強く沈着していた。また、ステント留置群では4週間目にTn-Cの沈着がみられた。 【考察】今年度の研究では、Fibrous Capが形成されるなどヒトの慢性的な動脈硬化病変により近い病変を持つモデルの作成に成功した。また、粥腫の管腔側にTn-Cが沈着することが明らかになった。今後、さらに細胞外マトリクスを中心に遺伝子発現の解析を進めるとともに、ステント留置が及ぼす影響を検討する予定である。
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