研究概要 |
脳血管障害の際に出現する一次虚血病変は遅発性に二次変性病変を障害領域周辺や障害領域に関連した別領域に引き起こす事が知られている。我々はこれまで、ペプチド性神経成長因子・サイトカイン・非ペプチド性神経保護因子の作用について、一次虚血病変阻止効果を中心に検討を進めてきたが、実際の臨床の幌では、一次病変出現直後より神経保護因子誉投与することが通常である。従って、本研究では、一次病変出現後に神経保護因子(プロサポシン関連ペプチド:18MP)を投与し、その二次変性予防効果を検討することを目的とした。最終年度である本年度は、初代培養神経細胞を用いて18MPの神経保護効果の有無と細胞死関連遺伝子の発現に及ぼす影響を調べた。その結果、一酸化窒素供与体ニトロプルシッドナトリウム(SNP)に神経細胞を短時間暴露するとアポトーシス様神経細胞死が誘導された。一方18-MPをSNP処理前から投与した場合のみならずSNP処理後に投与した場合でも、アポトーシス様神経細胞死を有意に抑止した。次いで、18-MPがいかなる細胞死関連遺伝子の発現に影響を与えるか調べる為、Bcl-2,Bcl-XL,Bcl-w,Baxを始めとする30種類程度の主要な細胞死関連遺伝子に対する特異的プライマーを合成して、18-MPにより変動する遺伝子をRT-PCRにより解析した。その結果、培養神経細胞では18-MPによりBc1-x_Lの遺伝子発現が増強する事が明らかとなった。更にBcl-xL蛋白質の神経細胞での発i現を18-MPが増強するかどうか調べるため、抗Bcl-xL蛋白質抗体を用いてウエスタンブロット法を実施した所、18-MPにより神経細胞のBcl-xL蛋白質発現量は有意に増加した。以上の結果より18MPにはアポトーシス様神経細胞死を抑制する効果があり、その神経保護機構にBcl-xL発現量増加が関与すると考えられた。
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