術中視覚誘発電位記録のための新たな刺激装置を開発した。従来のものとの相違点は、一個の発光ダイオードの光量が40倍のものを使用し12個を直列で連結したこと、シリコンを使用することにより刺激装置そのものを軟らかくしたことである。これにより手術時に頭皮を翻転した後でも安定した視覚誘発電位が記録できるようになり、実際の臨床例において皮弁翻転前後で安定した記録ができることを確認した。さらに、眼球周囲の皮膚状から網膜電位を記録し、網膜が十分に興奮しているかどうかを同時にモニタリングできるシステムを開発した。実際の視神経近傍の内頚動脈眼動脈分岐部動脈瘤の症例では、神経と動脈瘤の剥離に際して視神経の損傷がないことを確認しながら手術を終えることができ、術後にも視力視野障害は認めなかった。さらに視神経萎縮などの高度の視力障害が存在する場合は、光が確実に照射されているにもかかわらず、網膜電位も視覚誘発電位も記録できないことを確認した。半盲が存在する場合にも波形に変化を来すことも確認した。これらの基礎データの集積は、術中に視覚誘発電位が変化した際に、術後の視機能を予測するためにも貴重ものである。現在は種々の麻酔薬の影響についても検討を行っている。視神経直接電気刺激による視神経誘発電位については、動物実験で安定した波形が記録でき、視神経の切断により電位が消失することを確認した。臨床例においても記録できることを確認したが、現在はさらに操作性の良好な刺激電極を試作し、臨床を開始したところである。また、これまでの結果につき英文論文を作成し、投稿した。
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