研究概要 |
悪性グリオーマは、腫瘍ごとに化学療法剤の効果が異なるが、これは、個々の腫瘍の薬剤耐性遺伝子の発現が関与している可能性が示唆されている。そこで、腫瘍ごとに化学療法剤の効果に関しては、in vitroにおいて、抗癌剤感受性試験を行うことで調べることが可能である。本研究代表者らは、これまで、悪性グリオーマに対する治療プロトコールとして、個々の症例の抗癌剤感受性試験結果と本プロトコールによる治療成績を過去の成績と比較検討し、さらに、薬剤耐性遺伝子発現解析を行い、抗癌剤感受性試験結果と比較検討した。本プロトコールを実施した悪性グリオーマ(退形成星細胞腫、膠芽腫)72例を対象とした。手術で摘出した腫瘍組織片をコラーゲンゲルマトリックス(CGM)法で8日間培養、6〜9種類の抗癌剤について薬剤感受性試験を行い、抗癌剤の腫瘍増殖抑制率に基づき2剤を選択し、1〜2ヶ月毎に最高10回まで動注化学療法を行った53例を対象とし、検討した。補助療法として、55〜65Gyの拡大局所照射とインターフェロンβを使用。また、薬剤耐性遺伝子(MDR.Topo IIなど)のmRNAを腫瘍組織より抽出して、RT-PCR法により、遺伝子発現を解析し、抗癌剤感受性の結果と比較検討した。この結果、抗癌剤感受性試験による増殖抑制率(%)の平均は、CBDCA42.7%,CDDP37.9%,ACNU30.8%,AcD30.8%,VCR3.2であり、白金製剤に高感受性を示した。また、本プロトコールにて治療した症例の平均生存期間は25.5ヶ月(退形成星細胞腫35ヶ月、膠芽腫13ヶ月)であったのに対し、過去LAR(インターフェロンβ、ACNU、放射線療法)で治療した37症例の平均生存期間は17ヶ月であった(p=0.07)。薬剤耐性遺伝子発現に関しては、施行症例数の少なさもあるが、抗癌剤感受性試験の結果と明らかな相関は得られなかった。結論として、抗癌剤感受性試験による腫瘍の個性(薬剤感受性)に応じたテーラーメード動注化学療法は生存期間の延長を認める傾向を示し、過去の治療プロトコールよりも優れている可能性を示唆した。また、抗癌剤感受性試験と薬剤耐性遺伝子発現は有意な相関が認められず、更に症例を積み重ねる必要があると考えられた。
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