研究課題
既に脊髄損傷後の逆行性変性へのアポトーシスの関与が示唆されている。現存するアポトーシス抑制効果を示す薬剤は、副作用などの面で臨床応用に耐えない。低体温療法は重症頭部外傷の治療の応用として脊髄損傷にも一部の施設において適応され一定の効果を得たとの報告が散見され、また、胸腰部大動脈置換術に脊髄の低体温を適応し虚血による障害を軽減したとの報告も見られる。が、いずれも基礎データに乏しいことは否めない。これまでに我々の施設では、神経損傷に於けるアポトーシスの関与について、ラット局所脳虚血モデル(TakiらNagoya Med. J 2000)、ラットくも膜下出血モデル(NakatsukaらNagoya Med. J 2000)、およびラット凍結脳損傷モデル(KatanoらNeuroReport 2000)における、アポトーシスおよび細胞周期関連遺伝子の発現を検討し、初期損傷に続く二次障害にアポトーシスが関与し、細胞周期の制御がその抑制、ひいては後遺症の軽減につながる可能性を示唆した。また、Kimuraら(Neuro Med Chir 2003)は損傷周囲での浸透圧調節遺伝子(SMIT)の発現亢進を明らかにし、これによる二次損傷とアポトーシスとの関連が推測された。さらに、Kawamuraら(J Neurotrauma 2000)はくも膜下出血モデルを用い、低体温治療後に虚血ストレスが緩和されることを示した。現在我々は、(1)ラット脊髄損傷モデルにおける神経細胞死へのアポトーシスの関与および、その経路の同定。(2)ラット脊髄に対する低体温療法の施行法の確立。ブランケットを用いた全身の低体温と、硬膜外または髄腔内の冷生理食塩水灌流による局所冷却、の比較検討(低温維持の安定性、合併症)。(3)各冷却法のラット脊髄損傷モデルに対する影響の比較検討(組織学的変化、行動、アポトーシス)、を主な柱として研究を継続している。
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