研究課題
既に脊髄損傷後の逆行性変性へのアポトーシスの関与が示唆されている。現存するアポトーシス抑制効果を示す薬剤は、副作用などの面で臨床応用に耐えない。低体温療法は重症頭部外傷の治療の応用として脊髄損傷にも一部の施設において適応され一定の効果を得たとの報告が散見され、また、胸腰部大動脈置換術に脊髄の低体温を適応し虚血による障害を軽減したとの報告も見られる。が、いずれも基礎データに乏しいことは否めない。そこで、我々はラット脊髄損傷モデルにおける神経細胞死へのアポトーシスの関与と、それに対して低体温療法を適応し、その有効な施行法の確立とラット脊髄損傷モデルに対する影響の比較検討を試みた。冷却法としては、ブランケットを用いた全身の低体温や硬膜外または髄腔内の冷生理食塩水灌流による局所冷却を試した。しかしながら、ラットにおいて一定時間低体温を保つことが困難であったためと考えられるが、残念ながらいずれの方法を用いても有意な結果は得られなかった。一方、我々は損傷部位周辺における浸透圧調節遺伝子(SMIT)やmyelincephalic-specific protease (MSP)の発現亢進を明らかにした。これらの結果から、これらによる神経組織の二次損傷の可能性とそのアポトーシスとの関連が推測され、今後それらの機構を解明し、抑制することで神経組織保護を実現できる可能性があると考えている。
すべて 2004
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Brain Res Mol Brain Res 126
ページ: 129-136