研究概要 |
アポリポ蛋白E (apoE)の3種のアイソフォーム(apoE2,apoE3,apoE4)を個別に保有する遺伝子改変ノックイン(KI)マウス(2/2,3/3,4/4KIマウス)を用い、平成14年度に、実験的永久局所脳虚血負荷(pMCAO)後24時間までの急性期脳梗塞巣拡大に関して、apoE4アイソフォーム保有が脳梗塞巣を増大させる危険因子となることを明らかにした。平成15年度に、apoE4を保有する個体が、アイソフォーム特異的に脳損傷に対して脆弱で、pMCAO後1-7日後に発現する遷延性脳梗塞巣拡大をも増悪することを明らかにした。さらに、遷延性脳梗塞巣拡大を増悪させる因子として、apoE4アイソフォーム特異的に観察された虚血辺縁領域でのastrocytic activationの増加が関与している可能性を明らかにした。平成16年度は、apoE4アイソフォーム特異的脳損傷増悪病変の病理発生と治療の可能性に着目し研究課題を遂行した。即ち、S100産生阻害を介してアストロサイト(AC)活性化を抑制する薬剤(arundicacid)を投与しその効果を検討した。その結果、pMCAO後5日目の脳損傷の程度は全KIマウスで改善され、その効果は4/4KIマウスで最も優っていた。また、4/4KIマウスに特異的な遷延性脳梗塞巣拡大がほぼ完全に抑制された。Arundic acid投与により、4/4KIマウスにおけるAC活性化/S100発現の増強と脳損傷増悪が最も強く抑制されたことから、apoE4アイソフォームによる脳損傷増悪病変に、AC活性化の増強が重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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