研究課題/領域番号 |
14571330
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
浅野 孝雄 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70090496)
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研究分担者 |
森 隆 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (60239605)
森川 栄治 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (90251256)
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キーワード | 脳虚血 / 永久脳虚血モデル / ラット / S-100 / アストロサイト |
研究概要 |
近年、グリア細胞の機能的変化が様々な脳疾患の病態に深く関与していることが示唆されている。アストロサイト特異的蛋白質(S-100)が、脳卒中患者の脳脊髄液・血液中で上昇しており、神経症状や梗塞巣の大きさとS-100含量の上昇に相関性が認められることが報告されている。平成14年度の研究では、脳虚血におけるアストロサイト活性化と梗塞巣形成との関係を調べ、虚血辺縁領域の活性化アストロサイトによるS-100B蛋白の合成・分泌増加が、遅発性の継続的な梗塞巣の増大に重要な役割を果たしているデータを得た。平成15年度は,この活性化アストロサイトから合成・分泌されるS-100B蛋白を標的にした薬剤[(R)-(-)-2-propyloctanoic acid]を用いて遅発性の梗塞巣伸展現象のメカニズムを解明することを目的とした。 研究成果として以下の結果を得た。1)[(R)-(-)-2-propyloctanoic acid](10mg/kg i.v.)は、永久局所脳虚血後24時間と168時間の間で発現していた遅発性の梗塞巣進展現象を抑制した。2)しかし、永久局所脳虚血後24時間以内の抑制効果は見られなかった。3)本薬剤は、永久局所脳虚血負荷後に虚血辺縁領域で活性化されたアストロサイトにて合成・分泌されたS-100Bそしてglial fibrillary acidic protein(GFAP)を抑制した。4)本薬剤は、虚血辺縁領域でのTUNEL陽性細胞数(アポトーシスを含めた細胞障害を反映する細胞数)を抑制した。5)永久局所脳虚血負荷後に発現する神経学的徴候を投与後24時間の早期から軽減した。以上の研究成果より、遅発性の梗塞巣伸展現象のメカニズムに虚血辺縁領域で活性化したアストロサイトの過剰な反応と分泌されたS-100Bが、増悪因子として働き、遅発性の梗塞巣伸展現象を起こしている可能性が強く示唆された。
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