ラットにおける選択的脳分離循環による脳低温法の基礎研究を行った。 1.脳温の変化:分離循環流量を40ml/hで行ったところ、脳温は33℃まで低下した。次に60ml/hで行ったところ、脳温は30分間で、31℃まで低下したが、脳温が33℃になると低下速度が減退する傾向が認められた。 2.血圧の変化:流量が60ml/hの場合、分離循環を開始すると一過性に血圧は低下したが再び回復に、その後は比較的安定して推移し、分離循環を行うことにより、全身の血行動態にはあまり影響しないことが示唆された。 3.CBF:laser dopplerにて測定したため、MCAO直前を100%とした。MCAO中は20%まで低下し、分離循環を開始すると、MCAO前より若干増加し、その後100%で経過した。脳温は33℃まで低下していることを考慮すると、分離循環を行うことにより、生理的血流量より血流が増加していると考えられる。 4.TTC染色による24h後の梗塞巣:normothermia群では、cortexから基底核にかけてswellingを伴って、大きな梗塞巣を形成した。normothermia群は梗塞面積43%に対し、分離循環群では25%で、本法により梗塞巣が縮小した可能性が示唆された。 ラットにおいても、同法を用い、血圧および直腸温を維持したまま、脳温のみ31℃台まで低下させることが可能であった。脳虚血に対し、同法が保護効果を有する可能性が示唆された。
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