平成14年度の検討にて、ラット局所脳虚血モデルにおいて、選択的脳分離循環による脳低温法の脳保護効果が示唆されたので、本年度は、例数を積み重ねて選択的脳分離循環法の至適条件を検討した。 次に、脳低温療法における脳保護作用機序解明のため、基礎実験としてラット局所脳虚血モデルにおいて全身冷却による脳低体温療法が、炎症性サイトカイン発現に与える影響を免疫組織学的に検討した。 1.選択的脳分離循環による脳冷却の指摘条件 体温への影響、全身血圧への影響を考慮すると、femoral-carotid bypassを用いたラット選択的脳分離循環法では返血速度を60ml/hrとすることで、目標脳温33度までは15分で、31度までは30分で、全身状態に大きな影響を与えずに到達可能であった。これは3.3ml/kg/minの返血速度に換算された。 2.脳低温療法の血管内皮保護作用機序の基礎的検討 次に、脳低温法の作用機序を明らかにするために、脳虚血にともなう血管内皮障害に注目し、基礎実験として室温放置群、全身冷却群において、血管内皮におけるICAMの発現を免疫組織学的に経時的に検討した。その結果、虚血2日後において、冷却群で室温放置群に比して、ICAM発現の抑制を認めた。これは脳低温による血管内皮障害の軽減によるものと考えられた。
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