研究概要 |
慢性脳虚血状態の脳に、少ない侵襲で豊富な新生血管を得られる手術法RDP (Reversed durapexia)を開発し、その機序の解明、より効果的にするための改良をめざして動物実験を行ってきた。昨年度は慢性脳虚血モデルとして確立できたウイスターラット両側総頸動脈結紮モデルをもちい、露出硬膜切開部の局所に皮下に埋没させた持続注入ポンプを用いて血管増殖因子を作用させ、増殖因子による血管新生増強効果を認めた。 今年度は同じモデルを用い、より実際的な治療法を考え、局所に増殖因子を含ませた平皿状の綿をおいた。動物をA.B.Cの3群にわけ、昨年よりさらに広く骨窓を作成し、A群では前頭頭頂部の硬膜を露出させ、B、C群では硬膜露出後硬膜に切開線(RDPの代用)をおいた。皮下に生理的食塩水(B群)あるいは増殖因子(C群用:増殖因子VEGF & bFGF各10μ9)を含ませた綿をおいた。手術終了30日後に、頭骸骨とともに脳を固定、脱灰し、この組織に免疫組織染色を行い、新生血管、増殖因子の動態、虚血性変化について検索した。今回は前年度のVEGF, FGFに加え、VEGFR, Ang1. Ang2, Tie2も併せて検討し、新生血管についてはFact VIIIを染色した。 梗塞巣の辺縁部を中心に増殖因子は著明に増加しており、その範囲は急性期脳虚血の30日後より広範に及んでおり、B, C群では脳表面すなわち硬膜を中心とする被膜から新生血管が虚血脳組織に向かっているのが認められた。脱灰操作のためか、Ang1. Ang2、Tie2の染色性に問題があり、条件をかえて試みているところである。 この方法による、すなわち増殖因子の局所投与による血管新生促進効果の可能性が認められた。その際の関係因子の動態、関与についてはなお検討中である。
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