研究概要 |
最初にひとglioblastoma multiforme細胞U87MG,U251MG,U373MGにGFP遺伝子をtransfectしてflow cytometryと蛍光顕微鏡でGFPの発現を確認して次の実験を行った。 1)Fischer 911 ratの脳を取り出して凍結後、10ミクロンの厚さで凍結切片を作成した。この切片で脳梁辺縁部に細胞を移植し、坑微小管剤SI-27を入れた培地で3日間培養し、薬剤の入っていない培地で培養したものを対照とした。その間移植1,4,8,16,24,32、48、72時間後にGFP発現をてがかりに細胞の広がりを倒立実体蛍光顕微鏡で観察し、GFPの発現範囲の変化をdigital image analyzerで数量解析を行った。結果としてSI-27投与群では有意にGFP標識細胞の広がりが抑制された。さらにはconfocal lazer microscopyでの観察ではGFP標識細胞が脳の切片の中に浸潤していて、脳切片の表面を遊走しているのではないことが明らかとなった。2)坑免疫剤サイクロスポリンを移植2週間前より生後4週のFischer 911 ratに投与して、免疫を抑制しておいた。glioblastoma multiforme細胞はステレオタクティック装置を用いて脳梁辺縁部下端に移植した。坑微小管剤SI-27は移植翌日から隔日5回ほど腹腔内投与した。SI-27投与群は非投与群(生食水同量投与を対照群とした)に比して有意に生存日数を延長した(SI-27投与群、58.5日;非投与群31.8日、p<0.001)。生存日数の解析に用いた動物とは別に移植三週後に脳を取り出してCD34で血管内皮細胞を蛍光免疫染色したが、SI-27投与群では非投与群に比して有意に血管内皮細胞が低下していて、腫瘍血管新生に抑制効果があることを見出した(p<0.005)。さらにGFPを発現している腫瘍細胞の細胞浸潤も有意に抑制されていた(p<0.001)。 以上の結果から坑微小管剤SI-27を用いることによって、脳腫瘍動物モデルでは腫瘍細胞浸潤と血管新生が制御可能なことが明らかとなった。
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