chromosome10qは悪性グリオーマ、特に膠芽腫において欠失があることが多いと言われる。 FGFR2はその遺伝子座がchromosome10q25.3-26にありこの領域は悪性グリオーマ、特に膠芽腫において欠失があることが多いと言われるためFGFR2 geneの有無を調べたところ(Southern blotにて)geneは存在することが解った。しかし、この部分でLOH(Loss of heterozygosity)が起こっているとの報告があり、variantが発現している可能性を検討してきた。そこで、LOHによる不完全なmRNAが転写されているかを、FGFR2のうち遺伝子配列が既知の各exon内のPCR primerを5'方向、3'方向それぞれに作成しone-direction PCRを行ってきた。これまで解析を行ったexonでは増幅されてくるPCR産物はなく、さらに他のexonの解析を進めている。 また、geneは存在してもmRNAへ転写されないgene silencingが起こっていることが考えられた。その一つのメカニズムとしてのpromoterのmethylationについて検討したところ、やはりhypermethylationが起こっており、これが悪性神経膠腫においてFGFR2を発現させないメカニズムの一つであると考えられた。現在もFGFR2の既知のvariantのベクターを作成中であり、これをglioblastoma cell lineへ導入し、その増殖、形態、移動能などを解析する準備をしている。 FGFR2が腫瘍化抑制効果を持つとするならば、FGFR2発現を誘導する方法を見出し、神経膠腫の治療への可能性を検討したい。 FGFR2の本当の機能はいまだ不明であるが、FGFR1などとdimerをつくりFGFR1の機能を抑制するdominant negative effectが知られており、FGFR1のような腫瘍増殖に働く成長因子をバランスよく制御しているものと思われる。そしてFGFR2のdominant negative effectが働かなくなることで腫瘍の発生、増殖が促進されるのであろう。
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