研究課題/領域番号 |
14571343
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
今井 文博 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (20288476)
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研究分担者 |
澤田 誠 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 教授 (10187297)
井水 秀栄 藤田保健衛生大学, 医学部, 助手
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キーワード | グリオーマ / ミクログリア / 細胞治療 / 血管脳関門 |
研究概要 |
グリオーマにミクログリア、マクロファージ、リンパ球等の炎症細胞が浸潤していることは以前より報告されてきた。ミクログリアは中枢神経系における免疫担当細胞であり、様々な脳の侵襲に反応して活性化されMHC Claas IIの発現、サイトカインやケモカインの分泌が誘導される。炎症や外傷、虚血性疾患,変性疾患におけるミクログリアの性質の反応性変化や神経細胞への作用を報告した文献は比較的多く認められるが、ミクログリアのグリオーマに対する生物学的意義を検討した報告は散見されるにすぎない。これらの限られた報告を総括すると、グリオーマに浸潤したミクログリアの免疫能は抑制されていて抗腫瘍作用がないばかりではなく、腫瘍に浸潤したミクログリアが分泌するサイトカインがグリオーマの増殖をかえって促進されているという説が一般的に認められており、ミクログリアがグリオーマの増殖を抑制するという報告は少ない。我々の実験系においては、PHK26にて蛍光貪食細胞染色を施した培養ミクログリアをグリオーマ動物モデルの血中に投与すると、グリオーマ内及び近傍に強く集積することが確認された。ここで注目すべきは、グリオーマモデル作製2週間後にミクログリアを血中投与し同日断頭された脳切片において、ミクログリアの集積はモデル作製時の脳損傷部位(グリオーマ細胞を脳内への注入した時に生じた注射針による損傷部位)には認められず、グリオーマ内及び近傍に集中している点にある。これらのデータより、ミクログリアのグリオーマへの浸潤は、ミクログリアを脳損傷部へ誘導するケモカインとは異なった、作用の強い因子によってひきおこされていることが示唆される。またミクログリアのグリオーマ動物モデルの血中投与によりコントロール群と比較して有意に腫瘍の縮小、生存期間の延長を認めた。。我々は少なくとも新生児脳より分離したミクログリアには、抗腫瘍効果があると確信している。このミクログリアの抗腫瘍効果が免疫反応によるものであるのか、液性因子によるものなのか今後の研究を要する。
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