研究概要 |
ミクログリアには、血液脳関門の通過能・脳内病巣への遊走能がある(Imai et al.:Neurosci.Lett..,237,1997,Neurosci.Lett.,272,1999)。この治療法を開発するに当たって、グリオーマが無症候性脳梗塞を合併しやすい中年以降に好発することを考慮すると、ミクログリアの虚血巣に及ぼす影響も検討しなければならない。本稿においてまずは一過性前脳虚血動物モデルの血中に培養ミクログリアを投与し、虚血海馬CA1錐体細に及ぼす影響を検討した。その結果ミクログリア投与によりCA1領域における遅発性神経細胞死に伴う神経細胞の脱落が抑制されることが形態的に確認され、かつ記憶力低下が抑制されることが動物行動解析(passive avoidance task)によって証明された。 グリオーマにミクログリア、マクロファージ、リンパ球等の炎症細胞が浸潤していることは以前より報告されてきた。ミクログリアは中枢神経系における免疫担当細胞であり、様々な脳の侵襲に反応して活性化されMHC Claas IIの発現、サイトカインやケモカインの分泌が誘導される。炎症や外傷、虚血性疾患、変性疾患におけるミクログリアの性質の反応性変化や神経細胞への作用を報告した文献は比較的多く認められるが、ミクログリアのグリオーマに対する生物学的意義を検討した報告は散見されるにすぎない。本稿においてはマウスの脳に同系グリオーマ株GL261を注入しグリオーマ動物モデル作製後、動物モデルの血中に蛍光染色を施した培養ミクログリアを注入した。その結果ミクログリアにはグリオーマへの強い集積能があること、ミクログリア注入により動物モデルの優位な生存期間の延長が認められることが確認された。
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