研究概要 |
悪性グリオーマの安全かつ確実な摘出を可能とする蛍光ガイド法の造影剤としては、腫瘍細胞特異的に造影される5-ALA以外にもとFLS(Fluorescence sodium)やICG(indocinanine green)が存在する。いずれも蛍光造影剤の分布には特徴があるので、異なる蛍光造影剤により二重染色をすることで異なった種類の局在情報を得ることが可能である。 本研究の第一目的は,蛍光標識した脳腫瘍に対して蛍光スペクトル解析や二重蛍光標識を応用し,腫瘍局在の同定を瞬時に行える手法を確立することである。第二の目的は、腫瘍特異性の強い次世代の蛍光造影剤(FLSにアルブミンを結合させたもの)を開発することである。第三の目的は、蛍光診断のみならず5-ALAによる光線力学療法の可能性についても基礎研究(活性酸素種の測定と細胞死の機序)を行うことである。 蛍光スペクトルを光ファイバー型センサーと分光器により解析することで、ALA由来のPpIXやFLS特有の蛍光スペクトルを検出することが可能であった。また、スペクトル検出に要する時間分解能は、ミリ秒オーダーであることから蛍光解析結果により、リアルタイムに手術メスが制御可能であること、すなわちセンサー型手術ロボットの開発が可能であることが判明した。 次に、FLSにアルブミンを結合さることで腫瘍特異性を数倍上昇させることを明らかにした。これは、腫瘍特異性の高いALAとほぼ同等の腫瘍特異性である。 5-ALAのPDT効果について、活性酸素種の直接的な検出をEPR(電子スピン共鳴法)を用いて行った。その結果、PDTにより細胞内で発生する活性酸素種の検出に世界で初めて成功した。また、ALA-PDTにおいて主要な活性酸素種は、一重項酸素であることが判明した。 ALA-PDTにおける細胞死のメカニズムに関しては、ミトコンドリア膜電位の低下、チトクロームCの放出、カスパーゼ9を介したアポトーシス経路の活性化が生じていることを解明した。 以上、本研究を通じて、次世代のPDDのみならずPDTの開発につながる多くの研究成果を得ることができた。
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