NPH(正常圧水頭症)の主要な症状であり、シャント治療の有効性予測の重要な指標となる歩行障害は、その客観的な障害の特徴や発症のメカニズムについて十分理解されていない。過去、我々はQuickMAG 3次元動作解析システム、BERTEC force plateシステムにてNPHの歩行について解析を行い、その歩行は摺り足歩行となっていることを報告した。しかし、従来、歩行解析に使用されている装置は大掛かりであるため設置や移動は困難であり、臨床現場で広く使用することは難しい。しかし、足底圧の経時的測定が可能なF-SCANシステムはより簡便な歩行解析のシステムであり、このシステムが従来のシステムと同様にNPHの歩行解析に有用であれば、設置や移動も容易であることから、NPHの補助診断としての歩行解析の臨床使用の便宜性が向上する。そのため今回研究者らは、NPH患者のQuickMAGシステム、BERTEC force plate、F-SCANシステムを使用し、その解析結果の相関関係を検討した結果、 (1)QuickMAGシステムでの解析では、NPHの歩行は下肢の協調運動とくに足関節の動きが障害されており、BERTEC force plateシステムでは歩行時の前方への推進力となる踏み込みの障害を認めた。またF-SCANシステムでも足底圧が足先とくに第1足指部分で低下していることを認め、BERTEC force plateと同様に歩行時の踏み込みの障害を検出できた。 (2)また従来の方法では正常例に近い歩容である症例でも、足底圧のパターンは正常とは異なっており、従来の方法に比べ異常について詳細に検出が可能であると考えられた。 以上のようにF-SCANシステムのNPHの歩行解析での有用性は示された。しかし、充分な症例の蓄積がなされておらず、現時点ではF-SCANシステム単独での歩行解析によるNPHのシャント術の効果予測などの有用性については明らかではない。今後より症例の蓄積と解析を進めていく。
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