研究概要 |
1.方法 (1)Wistar系rat 64匹を以下の各16匹2群に分け右膝蓋腱に外科的処置を行ない,術後2,3,6週で各群とも8匹ずつ屠殺し,5匹を力学的解析へ3匹を免疫組織学的観察へ残りの匹をRT^PCRへ供した.なお,外科的処置を施さない左膝蓋腱を正常対照とした。 (2)I群:in situ凍結解凍処理により膝蓋腱線維芽細胞を完全に死滅させた。 (3)II群:膝蓋腱を外科的に同定するsham手術のみを行なった。 2.結果 (1)I群の弾性係数は術後2週ではII群あるいは正常膝蓋腱との間に有意差はないものの,I群は6週ではII群および正常膝蓋腱に比較し有意に低下した. (2)III型コラゲンに対する免疫組織学観察ではI群において処置後2週以後に細胞浸潤が生じ、浸潤細胞周囲にIII型コラゲンの発現が認められた。一方、II群においては処置後2週にて表層のみにIII型コラゲンの発現が認められたが、6週では正常膝蓋腱と同様にIII型コラゲンの発現は明らかではなかった。 (3)RT-PCRによるIII型プロコラゲンの遺伝子発現に関しては、処置後3週ではIおよびII群とも正常に比し発現増加をみとめ、処置後6週ではI群ではIII型プロコラゲンの遺伝子発現が増加したものの、II群では正常膝蓋腱との間に有意の発現の差は認められなかった。 3.結論:壊死後に外来性細胞浸潤が認められた膝蓋腱では浸潤細胞周囲にIII型コラゲンを認められるとともにその力学的低下が認められた。したがって、細胞浸潤後に認められる膝蓋腱の力学的劣化は浸潤細胞が産生するIII型コラゲンが起因することが示唆された。
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