研究概要 |
1.方法 1)実験動物として雌成熟日本白色家兎72羽(体重:3.6±0.4kg,平均±標準偏差)を使用し,以下の3群に各24羽に分けた. 2)I群の右膝蓋腱に対しては,in situ凍結解凍処理により膝蓋腱の内在性細胞を死滅させた後,pore size 193μmのnylon製filterにて膝蓋腱を2重に包むwrapping処理にて,周囲組織からの外在性細胞の侵入を抑止した. 3)II群の右膝蓋腱に対しては,凍結解凍処理を行わずにI群と同じwrapping処理を施行した. 4)III群の右膝蓋腱に対してはin situ凍結解凍処理のみを行った. 5)各群とも術後,外固定を施さずにケージ内で飼育し,術後1,3および6週にて8羽ずつ屠殺し,各時期3羽に対しては組織学的観察を5羽に対しては力学的特性の検討を行った. 2.結果 1)組織学的観察ではI群は膝蓋腱実質部内に6週まで細胞は認められなかった.一方,II群は正常膝蓋腱同様と同様であった.III群は1週で膝蓋腱実質部の線維芽細胞は消失し,3週より腹側よりの多数の細胞浸潤を認め,6週においてその細胞数は増加していた. 2)膝蓋腱の力学特性に関しては,III群の引張強度および弾性率はI群およびIIのそれに比し,有意に低値を示した. 3.結論 本研究により,外在性細胞侵入は内在性細胞壊死後膝蓋腱の引張強度および弾性係数を有意に低下させることが証明された.したがって,内在性細胞壊死後の膝蓋腱の力学強度の低下は内在性細胞壊死自体によるものでなく,外在性細胞の生体反応が原因と示唆された.
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