研究概要 |
研究者らによる昨年度までの研究により、脊柱後方構成体である腰椎椎間関節の不動化は、脊柱全体の剛性を著明に増加させることが明らかになった。したがって、この不動化は当該セグメントの前方構成体である椎間板に除負荷の環境を与え、また隣接セグメントの椎間板に過負荷の環境を与えていることが推定される。特に隣接椎間板への過負荷の影響は、椎間板変性の促進効果をもたらすことが推察される。この推論を実証するために、以下の二群のモデルを作成し、術後6週間で超微細構造学的検討を行った。第1群(脊椎椎間関節不動モデル):第3/4、5/6椎間関節の不動化を行う。第2群(正常コントロール群):侵襲を全く加えないコントロール群である。各レベルの椎間板から矢状面超薄切片を作成し、HE染色、およびサフラニン-O染色を施行した超薄切片を光学および偏光顕微鏡にて観察する。さらに、免疫組織学的染色により、PCNF, CD31,VEGF, collagen type I&IIIを観察する。また、Tunnel染色により、椎間板細胞のapoptosisを観察した。特に不動化関節の隣接椎間板(L4/5)に関して、コントロール群での同レベル椎間板(L4/5)との比較結果を報告する。 1)H-E染色;不動化群では、髄核細胞が減少した。細胞の集合像が減少し、かつ核の大きさの小さい細胞が多数見られた。線維輪の規則正しい層状走行は乱れ、コントロール群と比し、変性変化が認められた。 2)サフラニン-O染色;コントロール群に比し、不動化群では明らかに染色性は低下した。椎間板変性に伴うムコ多糖の含有率の低下を示す。 3)免疫組織学的染色;PCNA, CD31, VEGF, Collagen Type I, Collagen Type III, Tunnel染色を両群で比較した。いずれの免疫染色法においても、コントロール群と不動化群との間に有意な差は認められなかった。 以上の結果から、椎間関節の不動化処置後6週において、隣接椎間板にはムコ多糖含有率の低下と線維輪線維の走行の異常を主な所見とする椎間板変性が生じることが判明した。しかし、その機序、病態に関しては免疫染色の結果から実証することは不可能であった。更に術後長期に渡り、分子生物学的手法も駆使した検討が必要である。
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