研究概要 |
椎間関節の完全不動化が、不動椎間および隣接椎間の椎間板に及ぼす影響とその対策を統合的に解明する目的で以下の研究を施行した。1)日本白色家兎を用いた動物実験、2)仔牛屍体脊柱を用いた生体力学的実験、3)有限要素法(FEM)を用いた数値解析、4)実際の臨床例による観察的研究。研究(1)においては、チタン性ワイヤーとPMMA(骨セメント)を使用し、日本白色家兎の腰椎椎間関節において即時的および永久的固定術モデルを作成し、生体力学的・免疫組織学的検討から、以下の結果を得た。1)腰椎椎間関節の完全不動化は、time 0の時点から、長期に渡って隣接椎間の椎間板に過負荷の環境を与える。その影響は、最も隣接する椎間板ほど大きく、不動化セグメントから離れるほど少なくなる。ii)椎間関節の完全不動化が隣接椎間板へ及ぼす影響は、組織学的にも大きく、H-E染色、サフラニン-0染色において、隣接セグメントには強い変性が観察された。しかし、PCNA, CD31,VEGF, Collagen Type I, Collagen Type III, Tunnel染色を用いて施行した免疫組織学的研究では完全不動化による影響は確認されなかった。研究(2)においては、従来の剛性の高い脊椎内固定器具を改良・使用することにより、隣接椎間への影響をより少なく出来ることが判明した。研究(3)では、全く薪しい脊椎内固定器具を開発することにより、隣接椎間板への影響が防止できる可能性が示唆された。研究(4)では、様々な臨床例の検討から、椎間を不動化させることの得失を追及し、椎間の不動化を避ける方策の開発がより一層有効であることが判明した。 今後、分子生物学的解析を進めることにより、椎間関節の完全不動化が及ぼす影響を分子レベルで解析すると同時に、予防法を始めとする具体的な対策を確立する計画である。
|