本研究の目的は、動物腱板修復モデル(ラット)において、腱板修復部の至適張力の存在を明らかにしその至適張力を求めること。初年度、次年度で、正常ラット群、初期張力A群0g、B群50g、C群100g、D群150g、E群200g、F群250g、G群300g、各群20匹、計160匹(320肩)で検討を加えた。(コントロール群は、非手術側としている。)測定項目は、腱板修復後3日、1週、3週、6週の時点で得られた棘上筋の筋容積、筋線維短径、棘上筋腱の細胞数、膠原線維の配列、最大破断強度、破断時断面積、破断時応力である。 結果としては、手術後の週数の経過と共に棘上筋の体積は減少したが、辣上筋の筋萎縮は初期張力の影響を受けていなかった。これは、術後の内・外固定による不動化の影響と考えられた。棘上筋腱の上腕骨付着部の組織では、腱板修復により膠原線維内の円形細胞の増加を認めた。膠原線維はコントロール群と比較し乱れ、その程度は低週数なほど大きかった。術後3週の時点では、膠原線維の乱れは、初期張力が小さい群ほど大きかった。術後6週の時点ではどの群でもコントロールと比べ差がなかった。毛細血管新生は各群で差がなかった。また、力学的検討では、コントロール群の平均最大破断荷重は、平均33.2N、腱性部分での平均断面積は1.06mm^2、平均最大破断応力は、31.3MPaであった。第6週での最大破断荷重、平均断面積、最大破断応力の結果はそれぞれ、A群、11.3N、1.72mm^2、6.6MPa、B群、15.2N、1.68mm^2、9.1MPa、C群、18.6N、1.54mm^2、12.1MPa、D群、23.8N、1.56mm^2、15.3MPa、E群、25.9N、1.52mm^2、17.0MPa、F群、23.2N、1.40mm^2、16.6MPa、G群、17.6N、1.36mm^2、12.9MPaであり、破断時最大応力は各群ともコントロール群に比べ、有意に低かった。腱板修復により修復部の力学的強度は低下した。群間の比較では、A群、B群に対し、D群、E群、F群は有意に大きく、腱板修復時の初期固定張力により最大破断張力に差が生じることから、腱板修復時の至適張力の存在が示唆された。本研究の動物モデルでは、200g付近が至適張力であるといえる。
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