研究概要 |
実験1、腰椎椎間板を支配する後根神経節ニューロンの分布を調べるために、神経トレーサーであるFluoro-Gold(FG)をL5-L6椎間板左側方部に投与してFGに標識される後根神経節ニューロンがどのレベルの後根神経節に分布するかを調べた。その結果、FG標識ニューロンはT13からL5の広範囲の後根神経節に分布しており、さらに全体の7.1%は投与側の反対側である右の後根神経節に分布していた。また交感神経幹を切除すると、L2より頭側の後根神経節でFG標識ニューロンは有意に減少することがわかった。これらの知見より椎間板の一部に生じた障害が場合によっては反対側も含めた広範囲の腰痛を起こす可能性が考えられた。また、椎間板の障害に対する侵害情報を伝達するニューロンの一部は交感神経節を経由していることが分かった。 実験2、2種類の神経トレーサー(FG, DiI)を椎間板および臀部皮下に投与したところ、その両者に標識される後根神経節ニューロンが存在することがわかった。これは椎間板の障害が必ずしも腰だけでなく、臀部などにも症状を誘発する可能性があることを示唆するものである。また同様に2種類の神経トレーサー(FG, DiI)を異なる椎間板に投与したところ、その両者に標識される後根神経節ニューロンが存在することがわかった。つまり、二つの異なったレベルの椎間板を同時に支配するニューロンが存在するということである。これは、椎間板性腰痛の性状が局在のはっきりしない腰痛である理由の一つとも考えられる。また、椎間板造影などの診断時に偽陽性が出る可能性があることを示唆するものである。 今後、これらの結果を確認すると同時に、腰椎椎間板を支配する後根神経節ニューロンの性質を調べることを検討している。
|