腰椎椎間板を支配する後根神経節ニューロンの分布を調べるために、神経トレーサーであるFluoro-Gold (FG)をL5-L6椎間板左側方部に投与してFGに標識される後根神経節ニューロンがどのレベルの後根神経節に分布するかを調べた。その結果、FG標識ニューロンはT13からL5の広範囲の後根神経節に分布していることが分かった。また交感神経幹を切除すると、L2より頭側の後根神経節でFG標識ニューロンは有意に減少することがわかった。また、椎間板の障害に対する侵害情報を伝達するニューロンの一部は交感神経節を経由していることが分かった。さらに神経トレーサーにて腰椎椎間板を支配するDRGニューロンを特定した上で、それらのニューロンの免疫組織染色を行い、その性質を調べた。また対照として同様の実験を足底皮膚に対しても行った。 侵害情報を伝える小型の後根神経節(DRG)ニューロンはその神経栄養因子感受性によりNGF感受性ニューロンとGDNF感受性ニューロンに分類される。前者は神経ペプチドであるsubstance P (SP)やcalcitonin gene-related peptide (CGRP)を含有しており、後者はisolectin B4 (IB4)と結合する性質を持ち、P2X3受容体を持っていることが分かっている。 結局椎間板を支配するDRGニューロンのCGRP陽性率は、椎間板群で54%、皮膚群で41%であった。IB4陽性率は椎間板群で1%、皮膚群で20%で、椎間板群で有意に少ないことが分かった。 これより、椎間板を支配する侵害受容性のDRGニューロンはほとんどがNGF感受性ニューロンであることが分かった。NGFは炎症時に誘導され疼痛を増強する性質があり、椎間板断要痛のメカニズムに関係している可能性が示唆された。
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