Semaphorin III (Sema III)は反発性の軸索ガイダンス分子として知られ、胎生期には分泌型のSema IIIが軸索の線維束形成、分枝、移動、組織分化に重要な役割を示している。成人ではSema IIIは脊髄motoneuronと脳のある種のneuronに発現している。今回脊髄切断によるSema IIIの発現の変化について脊髄と脳について調べた。 【方法】ラット脊髄切断モデル;ハロセン麻酔下Th8にて脊髄を完全切断したものと半切したものを作製した。6、12、24時間3日1、2、4週と正常脊髄においてネンブタール深麻酔下、脊髄切断群では切断部脊髄を摘出しRNAの抽出と凍結切片の作製を、脊髄半切群については脳を摘出し凍結切片の作製を行った。RT-PCR ; Total RNAから逆転写反応によりcDNAを作製、Sema IIIのプライマーによりPCR反応を行った。得られたバンドはb-actinにて補正した。In situ hybridization (以下in situ) ; Sema III DIG-labelled cRNA probeを使用した。In situ後蛍光免疫染色;in situ後各種細胞マーカーにてSema III発現細胞を同定した。 【結果】In situ後蛍光免疫染色より脊髄全切断部Sema III発現細胞はNeuN陽性neuronであり、各タイムコース発現がみられた。その他の細胞マーカーとの二重染色像は得られなかった。RT-PCRではSema III mRNAが24時間から3日において低下し、1から3週において正常脊髄の3/4程度まで回復した。脊髄半切群における脳組織においては片側の大脳皮質、大脳基底核に発現がみられ脊髄半切による反応性のものと思われた。 【結論】脊髄切断モデルにおける脊髄切断部と脊髄半切モデルにおける脳におけるSema IIIの発現について検討した。脊髄におけるSema IIIは切断後減少し、半切脳組織においては反応性にSema IIIの発現の変化がみられた。
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