研究分担者 |
片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
中村 耕三 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (60126133)
川口 浩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40282660)
位高 啓史 東京大学, 大学院・工学系研究科, 科学技術振興特任研究員(常勤形態)
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研究概要 |
1)ベクターの細胞内動態の観察:二重蛍光標識したDNAを用いて,細胞へのベクターの取り込み,DNA releaseをレーザー共焦点顕微鏡で観察したところ,直鎖状ポリエチレンイミンで,投与後早期の取り込み,細胞質内でのDNA release (decondensation)が観察され,遺伝子発現との相関が確認された.即ち,ポリエチレンイミンの持つエンドソーム溶解能が,細胞質内でのDNA挙動に有効に機能することが強く示唆された. 2)新規ブロック共重合体合成:化学構造的にエンドソーム溶解能を持つことが想定されるカチオンをブロック共重合体化し,その物性を系統的に確認した.いずれの共重合体にても,DMAとのコンプレックス化により,外郭をPEGで覆われ,内核にカチオンとDNAが凝縮する高分子ミセル構造を取ることが確認された.ただ,その凝縮の程度や粒径はカチオンによって大きく異なり,カチオンの分子設計によってこれら諸性質を自在にコントロールし得ることが明らかとなった. 3)生物学的機能評価:上記共重合体を用いて,培養細胞への遺伝子導入を行ったところ,DNAの良好な凝縮が得られるミセルにおいて,クロロキン等のエンドソーム溶解試薬は必要とせずに,非常に良好な遺伝子発現が得られた.この機能評価により,生体内環境での安定性,細胞内での効率的なDNA輸送能を併せ持つシステムという,当初の目的に適う分子構造が決定された.また,このシステムにより,軟骨細胞,滑膜細胞の初代培養株細胞に対しても,効率よい遺伝子導入が確認された.さらに,ミセル外郭にラクトースリガンドを導入したミセルにより,ラクトースレセプターを持つ肝由来細胞株に対して,著明な取り込み増加,遺伝子発現増加の得られることが確認された.
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