研究概要 |
腰椎椎間板ヘルニアおよび椎間板変性には遺伝的素因が存在する。われわれは、現在腰椎椎間板ヘルニアおよび椎間板変性に関与する疾患感受性遺伝子の同定を目的とし、慶応義塾大学、京都府立医科大学、理化学研究所の協力のもとで大規模な患者-対照相関解析を行っている。これまでCOL9A2,COL9A3,VDR,MMP3,AGC1遺伝子のある多型領域が、椎間板ヘルニアまたは変性に関与している可能性が報告されている。そこで日本人においてこれらの既報の遺伝子の多型領域が、疾患関連遺伝子として再現されるかどうかを検討した。まずCOL9A2遺伝子領域に存在する多型R326WはFinland人では疾患群で約2%であり、椎間板ヘルニア(sciatica)群で高い相関を認めていた。そこでPCR-direct sequence法により、日本人患者のDNAサンプルを用いてこの多型領域を検討した。その結果、日本人では12%とアレルの頻度自体が異なることを確認した。さらにCOL9A3に存在する多型R103WはFinland人では12%であり、こちらも高い相関を認めていた。我々は同様の検討を行ったところ、日本人では存在しないことを確認した。以上よりこれらCOL9A2、COL9A3の遺伝子多型は少なくとも日本人においては椎間板疾患関連遺伝子とはなりえないと結論した。またMMP3のpromoler領域には、5A/6Aの挿入/欠失多型が存在し、この多型がMMP3の転写活性に影響を与えており、日本人の高齢者における椎間板変性に関与するという報告がある。Taqman PCR法を用いて行った我々の検討では、相関は再現されなかった。さらにこれまでにわれわれが同定したVDR,AGC1についても多数の症例を用いて再検討を行っている。今後はこれら遺伝子内の別の領域に疾患感受性多型が存在するか否かを検討していく予定である。さらにハプロタイプを構築し、ハプロタイプに基づく患者-対照相関解析も同時に行う予定である。
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