人工関節周囲骨溶解に対する生物学的活性骨移植法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14571371
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 坂野 真士 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (10324427)
• 研究分担者: 鬼頭 浩史 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (40291174) ; 長谷川 幸治 名古屋大学, 大学院・医学系研究科, 助教授 (50208500)
• キーワード: 人工関節 / 骨溶解 / サイトカイン / 骨再生 / 骨芽細胞 / 同種骨

研究概要

人工関節置換後の骨溶解は大きな骨欠損をきたした場合、治療に難渋することが多い。本研究では、人工関節置換後の骨溶解を解明し有効な治療法を開発することを目的とした。平成15年度の研究においては、人工関節材料の微細片をマウスの頭蓋骨に移植する骨溶解のモデルを使用し、ポリエチレン粉、チタン粉、コバルトクロム粉による骨溶解の程度、炎症性サイトカインTNF-α,IL-1βおよび破骨細胞の分化に関与するRANKL,OPGの経時的産生量を検討した。その結果、ポリエチレン粉、チタン粉、コバルトクロム粉いずれも破骨細胞を誘導し骨溶解を形成すること、骨溶解にはTNF-α,IL-1βの発現増加を伴うことが判明した。しかし、TNF-α,IL-1β発現の経時的増減はポリエチレン粉、チタン粉、コバルトクロム粉でそれぞれ異なることがわかった。また、RANKL,OPGの発現に関しては、ポリエチレン粉、チタン粉ではRANKL/OPG比が高いものの、コバルトクロム粉ではRANKL/OPG比が低く、生体材料の種類により破骨細胞誘導に2種類の経路があることが示された。一方、骨溶解に対する生物学的活性骨移植法として、scaffoldとサイトカインを兼ね備える同種骨に加えて、自家骨髄細胞あるいは自家骨髄細胞より分化させた骨芽細胞を骨欠損部へ移植する実験を行った。同種骨にはstructural allograftとmorsellized allograftの2種類を使用した。いずれの同種骨を使用した場合も、自家骨髄細胞あるいは自家骨髄細胞より分化させた骨芽細胞を加えることにより、同種骨単独より多くの骨形成を誘導しうることが、レントゲン学的、組織学的評価にてわかった。この結果は、今後発表していく予定である。

研究成果

• [文献書誌] Masashi Kawasaki, Yukiharu Hasegawa, Shinji Sakano, et al.: "Quality of life after several treatments for osteoarthritis of the hip"J Orthop Sci. 8・1. 32-35 (2003)
• [文献書誌] Yukiharu Hasegawa, Shinji Sakano, Toshiki Iwase, et al.: "Pedicle bone grafting versus transtrochanteric rotational osteotomy for avascular necrosis of the femoral head"J Bone Joint Surg Br. 85・2. 191-198 (2003)
• [文献書誌] Hideki Warashina, Shinji Sakano, Shinii Kitamura, et al.: "Biological reaction to alumina, zirconia, titanium and polyethylene particles implanted onto murine calvaria"Biomaterials. 24・21. 3655-3661 (2003)
• [文献書誌] Shogo Maruyama, Yukiharu Hasegawa, Shinji Sakano, et al.: "Experimental evaluation of the usefulness of osteochondral allograft for articular cartilage defect"J Orthop Sci. 8・4. 560-566 (2003)
• [文献書誌] 坂野真士: "運動器疾患に対する再生医療-臨床の視点から-骨の再生 BMPを用いた再生(1)"関節外科. 22・10. 1239-1244 (2003)
• [文献書誌] 坂野真士, 長谷川幸治, 鳥居行雄, 他: "同種骨Impaction GraftingとGanz Ringによる人工股関節臼蓋再置換術"日本整形外科学会雑誌. 77・3. S146-S146 (2003)
• [文献書誌] 鳥居行雄, 長谷川幸治, 坂野真士, 也: "セメントレス人工股関節置換術後のCortical Hypertrophyの経時的変化と分類"日本整形外科学会雑誌. 77・3. S447-S447 (2003)
• [文献書誌] 増井徹男, 坂野真士, 長谷川幸治, 他: "Osteolysisにおける炎症性サイトカインおよびRANKLの経時的変化"日本整形外科学会雑誌. 77・3. S949-S949 (2003)