これまでの研究でHB-GAM遺伝子欠損マウスの骨格系における表現型を調べた結果、コントロールマウスに比べて有為に骨形成能が低下していることが判明した。しかし、HB-GAMの生理学的役割については依然、推測の域を出ない。骨が重力や筋力などの力学的環境に応じて骨形成能を調節していることは、古くから知られている。我々のこれまでの研究からHB-GAMの発現様式は、骨の力学的環境変化に対応していることが示唆されてきた。そこで我々はHB-GAMが力学的環境に骨形成調節のメディエーターとして機能しているのではないかとの仮説にもとづいて、種々の力学的環境の変化をHB-GAM遺伝子欠損マウスに負荷した。すなわち、坐骨神経切除および下肢不動化手術を施行し、完全に運動機能を取り除いた上でこれらのマウスにトレッドミルによる運動負荷をかけて健側・不動化側での骨量の変化を観察した。通常のマウスでは不動化により有意に骨量が減少したが、HB-GAM遺伝子欠損マウスでは骨量の減少はほとんど見られなかった。通常マウスでは運動負荷により骨形成が促進されたが、HB-GAM遺伝子欠損マウスでは運動負荷のよる骨形成促進作用は見られなかった。以上の結果は、コントロールマウスではHB-GAMを介して、力学的環境の変化に対応しているのに対して、HB-GAMの欠損しているHB-GAM遺伝子欠損マウスではその能力が欠落しているために見られたと考えられた。
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