関節リウマチ(RA)で見られるパンヌスによる関節破壊のメカニズムには不明の点が多い。関節軟骨に侵入したRAパンヌスにはα4インテグリンが新規に発現することが判明している。本年度の研究では、α4β1インテグリン刺激がRA滑膜線維芽細胞(RSF)におけるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)産生に与える影響について調査した。 免疫沈降法を用いて、単層培養したRSFにはα4インテグリンが発現していることを確認した。α4β1インテグリンに結合するC末ヘパリン結合部位を含むフィブロネクチンフラグメント(HBFN-f)、合成ペプチド(CS-1)を投与すると、RSFによるMMP-1、MMP-3、MMP-13分泌が濃度依存性に亢進した。非投与群、N末ヘパリン結合部位を含むフィブロネクチンフラグメント、コントロールペプチド投与群では、RSFによるMMP分泌亢進は見られなかった。坑α4インテグリン抗体を投与すると、HBFN-fによるMMP産生は抑制された。阻害剤を用いた実験から、α4β1インテグリン刺激によるMMP産生亢進には、MAPキナーゼであるERK、p38、JNKが関与していることが判明した。 以上の結果から、RAパンヌスが関節軟骨に侵入する際に、α4β1インテグリンを介してRSFがコラゲナーゼ(MMP-1、MMP-13)並びにMMP-3を産生することが軟骨破壊に関与している可能性が示唆された。
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