頚髄症患者、腰椎神経根症患者、対照群の脳脊髄液中のlactate、alanine、acetate、glutamate、pyruvate、citrateを核磁気共鳴法により測定した。さらに、ELISA法を用いて、interleukin-1-beta(IL-1-beta)、interleukin-6(IL-6)、tumor necrosis factor-alpha(TNF-alpha)を測定した。これらの計測値を群間で比較し、さらに各群内で臨床症状などとの相関を検討した。なお、臨床症状には日本整形外科学会治療成績判定基準を用いた(JOA score)。 1 頚椎脊髄症患者では、脳脊髄液中のサイトカインやブドウ糖代謝産物、アミノ酸神経伝達物質は対照群と差はなく、臨床症状および罹病期間との間に相関はなかった。 2 腰椎神経根症では、対照群と比べて脳脊髄液中のIL-6が有意に高く、クエン酸が有意に低かった。乳酸、グルタミン酸、クエン酸は罹病期間との問に有意な正の相関を認めた。神経根ブロック効果時間との間には、TNF-alphaで有意な正の相関を、酢酸で有意な負の相関を認めた。 3 脳脊髄液中のサイトカインやブドウ糖代謝産物、アミノ酸神経伝達物質と臨床症状(JOA score)との相関は、頚椎脊髄症患者および腰椎神経根症患者のいずれでもみられなかった。 4 神経根症患者の脳脊髄液内では、炎症プロセスが進行していることが示唆されたが、結果がサイトカインによって異なっていたのは炎症プロセスの時間的推移の一断面を捉えているにすぎないためと考えている。また、神経組織内でクエン酸回路内の代謝に変化があることが示唆されたが、具体的にどこに変化が生じているのかを捉えることはできなかった。今後、さらなる検討が必要である。
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