研究概要 |
これまでのわれわれの研究で骨髄由来間葉系幹細胞により骨・軟骨欠損部が修復されることが明らかにされた。しかし、骨髄由来間葉系幹細胞は必ずしも単一の種類の細胞から構成されている訳ではないと考えられた。そこで、より多くの骨髄由来間葉系幹細胞を採取するために、Goodellらが骨髄中の最も未分化な細胞が存在する分画であると提唱したside population cellsを用いることにした。しかし、Goodellらが提唱する、Hoechst33342を用いた幹細胞純化法によって得られるside population cellsの細胞数が極めて少ないため、得られた細胞からさらに表面マーカーを用いてcell sorterで採取することが極めて困難であった。そこで、表面マーカーのCD34が陰性でSca-1が陽性な細胞、すなわち最も未分化で長期間骨髄再構築能を有すと考えられる細胞を用いることとした。これらの細胞は付着系の細胞のため、cell sorterで細胞を分離して採取する際に細胞が途中で付着し一定して採取することが困難であった。しかし、手技上の向上とともに一定して採取できるようになってきた。CD34(-), Sca-1(+)の細胞はいずれも小型で均一な紡錘形を呈していた。CD34(-), Sca-1(+)の細胞は培養開始後3日では接着細胞中0.3%にすぎなかったが、7日から10日にかけて細胞数が増加し全体の約3〜4%を占めた。しかし、その後は3週目までほぼ同じ割合を維持し続け、4週目以降再び減少していった。以上より、本年度はCD34とSca-1の細胞表面マーカーを用いた骨髄由来間葉系幹細胞の採取に世界に先駆けて成功した。今後は、この結果をもとにその分化能に関して検討し、in vivoの系への研究の進展を図る予定である。
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