われわれは過去5年間に骨髄由来間葉系幹細胞による骨・軟骨欠損部修復に関する研究を行い、ハイドロキシアパタイトを担体とした骨髄由来間葉系幹細胞の自家移植により骨・軟骨欠損部の修復が可能であることを報告してきた。しかし、各種の細胞が含まれており、必ずしも単一の種類の細胞から構成されているわけではないと考えられている。また、骨髄由来間葉系幹細胞の同定は、その数が少ないことと表面マーカーがいまだに明らかにされていないことから現在でも難しいとされており、骨髄由来間葉系幹細胞の分化の制御にも難渋しているのが現状である。 われわれは、より多くの骨髄由来間葉系幹細胞を採取するために、GoodellらがHoechst33342を用いた幹細胞純化法で、骨髄中の最も未分化な細胞が存在する分画であると提唱したside population cellsを用いることにした。さらにside population cellsの中で、表面マーカーのCD34が陰性でSca-1が陽性な細胞は、骨髄中に含まれる最も未分化で長期骨髄再構築能を有す細胞とされており、この細胞をcell sorterで採取して骨髄由来間葉系幹細胞として本研究に用いることとした。これらの細胞は付着系細胞であるため、cell sorterで分離して採取する際に細胞が途中で付着し一定して採取することが困難であった。しかし、手技の向上とともに一定して採取できるようになってきた。また、骨芽細胞への誘導培地を用いると骨芽細胞に容易に誘導された。さらに、軟骨細胞への誘導培地を用いると軟骨基質の形成が確認され、世界で初めてcell sorterで分離した骨髄由来間葉系幹細胞を平板培養で軟骨細胞に分化誘導させることができた。また、脂肪細胞への分化も確認された。 以上より、CD34とSca-1の細胞表面マーカーを用いた骨髄由来間葉系幹細胞の採取に世界に先駆けて成功し、さらに骨芽細胞と軟骨細胞さらに脂肪細胞への分化にも成功した。
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