研究概要 |
コリンアセチルトランスフェラーゼ(CAT)活性とカルノブスキー染色を用いた運動神経の選択的再生能の検討 1)大腿神経の運動枝(四頭筋枝)と知覚枝(伏在神経)の分岐部にて神経を切離し、神経断端間隙が4mmとなるようにシリコンチューブで架橋した。左側は遠位神経断端を180°回旋し(回旋群)、右側は回転せずに架橋した(非回旋群)。 運動枝と知覚枝の遠位神経断端から神経片を採取し術後4、8、16、36週でcholine acetyltransferase(CAT)活性を測定し、術後8、36週ではKarnovsky染色を行い、再生運動神経軸索数と短径を計測した。なお、CAT活性は運動神経で特異的に高値であり、Karnovsky染色は運動神経軸索を特異的に染色する。 正常運動枝と知覚枝のCAT活性はそれぞれ22698cpm、124cpmで有意に運動枝のCAT活性が高値であった。回旋群の運動枝と知覚枝のCAT活性は4週で3367cpm、2767cpm,8週で8143cpm、5876cpm,16週で9156cpm、5037cpm,36週で11891cpm、5025cpm、非回旋群ではそれぞれ4週で4240cpm、2034cpm、8週で8690cpm、3663cpm、16週で8389cpm、3885cpm,36週で10436cpm、3568cpmであった。回旋群の術後4週を除き有意に運動枝が高値を示した。 正常運動枝の再生運動神経軸索数は平均254個で、正常知覚枝内には染色された軸索はなかった。平均再生運動神経軸索数は回旋群の8週で運動枝が307個、知覚枝が263個、36週でそれぞれ210個、188個であり、非回旋群では8週でそれぞれ249個、248個、36週で170個、177個であり、両群とも8、36週で運動神経軸索数に有意差はなかった。 正常運動枝の再生運動神経軸索短径は平均3.5μmであった。平均再生運動神経軸索短径は8週の回旋群で運動枝が1.4μm、知覚枝が1.0μm、36週ではそれぞれ2.4μm、1.6μm、非回旋群ではそれぞれ8週で1.9μm、1.2μm、36週では3.1μm、1.5μmであった。両群とも8、36週で運動枝内の再生運動神経軸索径が知覚枝より有意に大きかった。 2)現在進行中の研究 (1)アメリカ手の外科学会で、神経切断後180°回旋して縫合(回旋群)しても、元に戻る(非回旋群と同じとなる)とコメントされたことに対して、神経切断後180°回旋して縫合(回旋群)したモデルを作成し、縫合部近位から遠位の運動神経の支配筋を含めて切除した。今後カルボノスキー染色を行い、近位運動枝を同定し、遠位2本の神経枝のうち筋肉が付着している方が運動枝であるため、縦切片を作成することで180°回旋縫合後に元に回旋がもどることのないことを証明する。 (2)運動神経線維の終末を検討するため、大腿四頭筋枝と腓腹神経を縫合するモデルを作成した。今後縫合後1年経過したモデルから縫合部遠位の運動枝と知覚枝を採取し、知覚枝内に過誤支配した運動神経線維と運動枝内の知覚神経に過誤支配した運動神経が淘汰されたかどうか検討する。
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