研究概要 |
[目的]椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛発現の機序を明らかにするために、椎間板ヘルニア・モデルを用いて実験的研究を行ってきた(Kayama et al.: Spine1996,Yabuki et al.: Spine1998,2001)。近年、炎症性サイトカインのひとつであるTNF-alpha(ヘルニア組織に含まれていることが判明している)を神経根上に設置すると、髄核を設置した場合と類似した疼痛関連行動が惹起されることが報告された(Igarashi et al.: Spine2000)。今回は、TNF-alphaの神経根上への投与が、脊髄後角ニューロンの応答にどのような変化を惹起するかを検討した。 [対象と方法]対象は雌のSDラットである。全身麻酔下に、左第5腰神経根と後根神経節(DRG)を展開し、また第5腰髄を展開した。第5腰髄の後角ニューロンから細胞外電位を導出し、WDR(wide dynamic range)ニューロンを選択した。TNF-alphaを神経根上に投与し、WDRニューロンにおける 1)自発放電、2)足底侵害刺激に対する反応、および3)DRGにおける組織学的変化、について検討した。 [結果]TNF-alphaの神経根上への投与は、 1)自発放電を増加させ、2)侵害刺激に対する反応を増強し(異常放電の持続)、および 3)DRGにおける炎症性変化を惹起した。 [結語]椎間板ヘルニアによって神経根近傍に産生されたTNF-alphaが、一次性求心性線維における異所性放電を惹起し、神経根性疼痛に相当する痛み伝達ニューロンにおける長時間持続する興奮(異常放電)を惹起すると考えられた。
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