研究概要 |
【目的】平成15年度は、「椎間板ヘルニアモデルにおける抗TNF-alpha抗体が腰髄後角ニューロンの応答に与える影響」について明らかにすることを目的とした。 【方法】Monoclonal anti-rat TNFα antibodyをPBS溶液にて50μg/ml濃度に調整した.尾椎より採取した髄核を神経根上へ投与した後,ゲルフォームに10μlの抗TNF抗体を含ませ髄核を覆うように投与した(NP+anti-TNF群,n=7).本濃度の抗TNF抗体は,0.01ng/mlのrecombinant TNFαの生物活性をin vitroで少なくとも50%以上中和することが証明されている(L-929 cell line, R&D systems).また,同量のPBSと髄核を投与した群をNP群(n=7),髄核と同質量の術野より採取した筋肉を投与した群を対照群とした(Control群,n=7).上記3群のWDRニューロンについて,pinchingとbrushingを加え,この刺激に対する腰髄後角ニューロン応答の変化を30分間隔で投与後120分まで測定した.それぞれ試料投与前のスパイク数を基準値(100%)とし,抗TNF抗体投与後の変化を検討した. 【結果】Pinch刺激後のスパイクは,Control群と比べNP群で髄核投与60分以降,その約6倍の増加と持続時間の延長が認められた(P<0.05).抗TNF抗体は,NP群で認められたスパイク後発射の増加をほぼ完全に抑制し,NP群で120分値が630.2±176%であったのに対し,NP+anti-TNF群では103.1±30%であった(P<0.05).Brush刺激に対しては,髄核投与後,刺激中と刺激後の両者で,スパイク数の変化は認められなかった. 【考察と結語】抗TNF抗体を椎間板ヘルニアモデルに投与すると、髄核投与によって惹起される腰髄後角ニューロンにおける異常発射が有意に抑制されることが判明した。この結果は、TNF-alphaが椎間板ヘルニアによる根性坐骨神経痛の発痛物質である可能性を示唆する。
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