研究概要 |
グリオスタチンは、神経栄養因子活性や血管新生活性をもつことが知られている.申請者らは,関節リウマチ(RA)の滑液の細胞生物学性質を調べる過程で,RA滑液中にこのグリオスタチンが大量に存在することを見いだし(Clin.Chim.Acta 218,1-4,1993),さらにグリオスタチンのRA病態マーカーとしての有用性を確認した(Br.J.Rheumatol 36,315-321,1997).グリオスタチン組換体を雌日本白色ウサギの膝関節腔内に注入したところ,滑膜炎の発症を認め,その病理組織増はRAに類似していた(Rheumatol Int 2000;20:13-19).RA患者より採取した滑膜培養細胞をグリオスタチンにて刺激したところ,関節破壊に影響を及ぼすmatrix metalloproteinases(MMPs)-1,3の発現が認められた(Rheumatol 38:1195-1202,1999). 臨床応用としてRA患者の滑膜切除術前後の血清グリオスタチン濃度を測定したところ,その濃度が滑膜切除術の有用性の判定材料になりうることを示し,さらに抗リウマチ薬responderの血清グリオスタチン濃度はnon-responderに比べて有意に低いことを示した(Clin Rheumatol 2001;20:331-336).そこで平成14年度にはRA滑膜培養細胞をIL-1β刺激し,グリオスタチン発現を指標にして,抗リウマチ薬の作用機序の1つを明らかにすることを試みた.ステロイドと金製剤によりグリオスタチンmRNAの発現が抑制された.平成15年度には蛋白質レベルでも同様にグリオスタチンの抑制を観察した.また免疫組織化学染色にてグリオスタチンは軟骨細胞でも発現し,関節破壊に関与しているようである.今後もこの点に付いて詳細に検討したい.
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