研究概要 |
ハイドロキシアパタイトファイバーシート(HAシート)は,気孔率,気孔径の調節が自在にでき,細胞の三次元培養が可能であると同時に,その高い生体親和性から,蛋白の担体としても利用可能と考えられる.平成15年度は,(1)recombinant human bone morphogenetic protein-2(rhBMP-2)を付加したHAシートをrhBMP-2のcarrierとして利用し,脊椎固定術に応用可能かどうか(2)骨芽細胞を内部で培養したHAシートが骨再生のscaffoldとして利用可能かどうか,移植実験動物モデルへの移植を行い評価した. 実験(1):ラット脊椎固定術モデルに対し,異なる量のrhBMP-2(5,10,15μg)を付加したHAシートを移植骨として用い,第5〜6腰椎間両側後側方固定術を施行した.術後腰椎を一塊として摘出,骨癒合の有無を評価した. 実験(2):1日齢ラット頭蓋骨由来の骨芽細胞様細胞を培養シャーレで培養後,トリプシン処理で細胞懸濁液を作成した.これを気孔率と気孔径が95%,5μm(SO),99%,250μm(S2000)の2種類のHAシートに5×10^6個の細胞数で播種し,2週間培養した.それらをヌードマウス皮下に移植し,1〜4週目に試料を摘出,光顕による観察を行った. 実験結果(1):10,15μg付加群の全例で移植後4週以内に骨癒合を得た.実験結果(2):移植後早期には,S2000の方がより多くの細胞がシート内部に三次元的に付着,増殖していた.しかし移植後4週目以降は,S2000では元の約半分の大きさに縮小,内部の細胞も減少したが,力学的強度で勝るSOでは内部に軟骨細胞様細胞が充満し,旺盛な内軟骨性骨化を認めた.よってHAシートは,骨再生における骨芽細胞のscaffoldとしても使用可能であるだけでなく,rhBMP-2の担体として有用であり,脊椎固定術へも応用可能と考えられた.
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