研究概要 |
慢性関節リウマチは免疫異常を伴う慢性炎症性疾患であり、多発性滑膜炎に伴う骨破壊が特徴的である。慢性関節リウマチ患者の骨破壊病変を病理組織学的に検討すると、慢性炎症性に増殖した滑膜の近傍に骨吸収を実行している破骨細胞が多数観察される。我々は病気の進行に伴う骨破壊を防ぐターゲットとして破骨細胞に注目しアデノ随伴ベクターを用いた遺伝子治療の確立を目標に検討している。破骨細胞の細胞株は樹立されていないので、in vitroの形成系であるマウス大腿骨骨髄細胞にM-CSF存在下に培養し破骨細胞分化誘導因子RANKLで刺激し形成した破骨細胞にAAVの導入実験を行った。マーカーとしてGFP遺伝子を組み込んだAAVを、RANKL刺激したM-CSF刺激未分化血球系細胞に導入したところ、未分化の血球系細胞には導入されたが、予想に反して分化した破骨細胞への導入は認められなかった。共同研究者の高柳らは破骨細胞の最終分化にNFATc1(NFAT2)の発現および活性化が必須であることをつきとめた(Developmental Cell, Vol.3,889〜901,2002)。したがって、AAVベクターにNFATc1の発現、活性を阻害するような遺伝子を導入することで骨破壊の進行を制御できる可能性があると考えられる。今後、そのような遺伝子の検索してゆく予定である。また、NFATc1の実際の慢性関節リウマチ患者の滑膜組織での発現を免疫組織染色法にて検討したところ、変形性膝関節症患者の滑膜では染色されなかったのに対し、慢性関節リウマチ患者の滑膜では発現しているのがpreliminaryに観察された。
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