研究概要 |
骨形成調節に関わる新しい生理活性ペプチドの検索を目的に、消化器系組織を出発材料とし、培養骨芽細胞におけるCaイオンの流入とcAMPの増減を指標としてスクリーニングを行った。研究をスタートさせた同時期に、ラット胃組織において骨芽細胞に作用する新しい生理活性ペプチドの存在を示唆する論文が発表されたので、出発組織を胃に絞って本格的な探索研究をスタートさせた。ラット50匹分の胃組織を抽出し、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過を行い、電荷と分子量による分離を行った。この時点でのスクリーニングにより、複数の活性画分が存在したので、まずは、Caイオンの流入活性を指標に精製を行った。すべての活性画分を、単一なピークとして単離することに成功し、構造解析を行った。その結果、活性物質は、ニューロメジンC(NMC)、ブラジキニン、T-キニンの3種の生理活性ペプチドであった。NMCが骨芽細胞において生理作用を有することや、血漿でしかその存在が報告されていないT-キニンという特殊な分子型が胃組織に存在していることを、今回の研究で初めて証明できた。次に、複数存在した細胞内cAMPの上昇活性を示すペプチド画分の単離・精製および構造決定を行った。その結果、活性物質の本体はVIP (vasoactive intestinal polypeptide)であることが判明したが、そのうちの1つのVIPは、数カ所のアミノ酸が既知の配列と一致しなかった。不一致なアミノ酸に関しては、今後詳細な解析が必要となるが、現時点では、何らかの化学修飾されたタイプか新たなスプライシングバリアントのVIPであると推測している。今回新たに同定した4種のペプチドについては、現在、胃腸組織間における生理的役割を解明するため、in vitro, in vivoでの検討を進めていると同時に、未精製の活性画分について新たな生理活性ペプチドの発見を目指して研究を継続していく予定である。
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