研究概要 |
正常細胞には影響を与えず、肉腫細胞のみを選択的に破壊するヒトへの応用可能な新規単ヘルペスウイルスI型(HSV-1)ベクターを作製する目的で、ウイルスに内在性のチミジンキナーゼを温存し、さらにカルポニンプロモーターの制御下に外来遺伝子を発現し得る次世代HSV-1複製・発現ベクターの開発を試みた。 ヒトカルポニン遺伝子の平滑筋特異的なプロモーター領域を、HSV-1ウイルスの複製開始に必須な転写因子をコードするICP4遺伝子の上流に挿入し、さらにその上流に標識遺伝子lacZを、ICP4の下流にInternal Ribosomal Entry Site(IRES)-EGFPを連結した相同組換えベクターpKX2betaG3を構築した。このDNA断片をICP4欠失HSV変異体d120のリボヌクレオチド還元酵素(RR,ICP6)の遺伝子座に相同組み換え法を用いて挿入し、ICP4とRRの二重欠失変異体を作製した。この新規HSV-1ベクターd12.CALPΔRRは、チミジンキナーゼ遺伝子を温存し、カルポニンプロモーターの制御下にICP4遺伝子と標識遺伝子であるEGFPを発現できるよう構築したものであり、in vitroのヒト肉腫培養細胞(平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫、消化管ストローマ腫瘍)を用いたtitration assayとin vivoのヌードマウス背部移植腫瘍(平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫)に対する尾静脈内投与の系で、カルポニン遺伝子を発現しかつ活発に増殖している肉腫細胞で搭載したLacZ遺伝子とEGFP遺伝子が発現し腫瘍溶解活性を示すことを確認した。また、in vitroの培養細胞系で、d12.CALPΔRRの複製が抗ヘルペスウイルス剤であるganciclovirの添加により容量依存性に抑制されることを確認した。
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