研究概要 |
小腸虚血再潅流が肺・肝などの遠隔臓器と同様、脳障害を惹起するかどうかを、昨年は脳波、in vivo-NMR(^<31>P)を用いて検討したが、本年はin vitro-NMR(^1H)を用いて検討した。ラットに上腸間膜動脈クランプ45分を行い、実験前(pre)、再潅流1、2、3、5、7日目に脳を摘出し、検体約0.8gをクライオプレスで液体窒素下に粉砕してパウダー状とし,秤量後0.6N過塩素酸重水素溶液2.0mlを加えて遠心分離した上清を分析試料とした。さらに、分析試料450μlに2.5mM TSP(内部標準物質)50μlを加えて^1H-NMR測定試料とした。^1H-NMR測定には生体観測用磁気共鳴装置を使用し,パルス繰り返し時間5秒で400回の積算を行った。得られた^1H-NMRスペクトルについてTSPからのケミカルシフト値によりピーク成分の同定を行って,TSPに対するピーク面積比から定量的解析を行った。今回測定した物質は、lactate、alanine、NAA、acetate、pyruvate、creatine、choline-containing compounds、myo-inositol、ATPである。 [結果]lactateではshamとI/Rの間に有意差(two-way layout ANOVA、p=0.02)があり、I/R内でもpreと5日目の間には差(p<0.001)を認めた。alanine、NAAではshamとI/Rの間に差を認めなかったが、NAAではI/R内で5日目と7日目の間に差(p=0.01)を認めた。acetateではshamとI/Rの間に有意差(p±0.01)があり、I/R内でも1日目と2日目が3日目と7日目で差を認めた。pyruvate、creatine、choline-containing compounds、myo-inositol、ATPではshamとI/Rの間に差がなかったが、I/R内で検討すると、creatineでは1、5日目が7日目と、choline-containing compoundsでは1日目と3日目の間に、myo-inositolでは5日目が1、2、7日目との間で、ATPでは5日目と7日目の間に差を認めた。
|