研究概要 |
本研究は、新しい実験手法である脊髄後角細胞からのin vivoホールセルパッチクランプ記録を中心としたシナプス伝達の電気生理学的研究と、個体レベルでの行動学的実験とを組み合わせ、疼痛情報伝達に重要な抑制系受容体チャネルの役割を、動物の行動変化とともにシナプスおよび分子レベルで解析することを目的としている。H14年度予算で購入した防振台の設置により、実体顕微鏡下でも安定したシナプス電流記録が可能となる。H15年度には、吸入麻酔薬セボフルランと下降性抑制系の神経伝達を担うノルアドレナリンの、GABA受容体を介した抑制シナプス伝達への相互作用を検討した。セボフルラン(1.8%,20min)はシナプス前生・後性の両方に作用してGABAシナプス電流を著明に増強した。一方、ノルアドレナリンは、アルファ受容体を介して介在神経細胞を興奮させ、GABAシナプス電流の頻度を著明に増加させた。しかし、シナプス後性、GABA受容体への作用は観察されなかった。また2剤併用下では、それぞれ独立してGABA電流増強作用を有することが判明した。これらの結果から、両薬剤の存在下ではGABAシナプス伝達のみならず、セボフルラン使用時の麻酔深度にも影響があることが示唆された。最終年度は、各種ニューロパシックペインモデル動物の脊髄神経細胞における興奮性および抑制性シナプス電流に焦点を当てて、疼痛治療薬として可能性の高い薬剤のシナプス伝達への影響について検討予定である。
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