研究概要 |
(1)気道防御反射に関する研究(追加実験) 前年度は,月齢2から7歳までの小児を対象に,全身麻酔下で喉頭への蒸留水投与が引き起す気道防御反射が,麻酔深度や成熟・発達によってどのように影響を受けるかを調べたが,発達・成熟に関しては一定の傾向を認めなかった.11歳まで対象をひろげ症例数を追加し検討したが,なお,発達・成熟の効果は明らかにできなかった.しかし,我々の過去に行った成人を対象とした研究とあわせると,以下のように結論が得られた. 月齢2から11歳までの小児では 1)吸入セボフルレン濃度を1%から2%にあげることで,咳・呼気反射,嚥下反射は出現しなくなるが,喉頭閉鎖,無呼吸反射,喉頭痙攣はほとんど影響を受けない. 2)成熟・発達による影響はみられないものの,成人と比較すると同じ2%の吸入濃度で咳・呼気反射,嚥下反射が抑制されやすい. この結果は,現在専門誌に投稿中である. (2)喉頭の開存性に関する研究 2歳から11歳の小児を対象に,セボフルレン1%の全身麻酔下に蒸留水の投与が喉頭の開存性にどのような影響を与えるかを検討した.蒸留水の投与後,初期の反射が収まり規則的な呼吸が再開された後,喉頭の開存性を刺激前と比較したところ,喉頭の開存性は明らかに上昇した.この結果は2003年アメリカ胸部疾患学会(ATS2003)で報告した. (3)下顎挙上の喉頭展開の視野に及ぼす影響. 40人の成人予定手術患者を対象に,下顎挙上がいかに喉頭展開の視野を改善するかを検討した.下顎挙上は,単純な喉頭展開と比較して明らかに視野を改善し,その効果はBURP maneuverにほぼ匹敵した.両者を組み合わせることで喉頭展開はさらに容易になった.この成果は,専門誌Anesthesiology 100(3):598-603,2004に発表した.
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