研究概要 |
誤嚥性肺炎による急性肺障害は、いまだに死亡率が高い疾患であり、敗血症に移行することもある。誤嚥性肺炎では、炎症反応により種々のサイトカインが誘導され、病態をよりいっそう悪化させる。これらの炎症反応の開始にはエンドトキシンやサイトカインによって活性化されるnuclear factorkappa B(NF-κB)が共通の転写因子として最も重要である。本研究ではNF-κBを阻害するpyrrolidine dithiocarbamateを投与してこれらの炎症反応を遺伝子レベルで阻止できるか否かを検討した。臨床的な誤嚥性肺炎に近いモデルとして、HCLを気管内に投与して作成した急性肺障害モデル犬にpyrrolidine dithiocarbamateを投与し、血液ガス、肺機能、血行動態の改善の有無を検討した。 バルビタールで麻酔し人工呼吸を施行した雄のビーグル犬を対象とした。誤嚥性肺炎モデルは、0.1NHCl(1mg/kg)を気管内投与することにより作成し、動脈カテーテル、CVPカテーテル、Swan-Ganzカテーテル、膀胱カテーテルを挿入した。血行動態(心拍数、血圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、中心静脈圧、心拍出量、体血管抵抗、肺血管抵抗)、血液ガス(pH, PaO_2,PaCO_2,HCO_3^-,BE)、肺機能(気道内圧、肺コンプライアンス、気道抵抗)、酸素消費量、酸素運搬量、乳酸値、尿量などのパラメーターを経時的にモニターした。血中、尿中のnitrite/nitrate(NOx)濃度を経時的にENO-20(エイコム)を用いて測定した。対照群(非処置群)と処置群の2群に分類し、処置群として、NF-kBを阻害するpyrrolidine dithiocarbamateを投与し、これら各種パラメーターへの影響を検討した。しかし、このモデルはpyrrolidine dithiocarbamateの効果を検討するには適当でないことが判明したため、他の方法を検討中である。
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