研究概要 |
心筋の虚血は冠動脈の血流が減少したときに起こり、再灌流がなければ不可逆的な組織傷害が惹起され心筋梗塞に至る。再灌流は虚血傷害から心筋を守るのに必須であるが、虚血後の再灌流は様々な組織において急性炎症反応や好中球の浸潤を起こし、心筋傷害にも関与している。エンドトキシンやサイトカインなどの刺激によって活性化される転写因子のnuclear factor kappa B(NF-κB)は、虚血によっても活性化され、再灌流によりさらに活性化が高まるといわれている。本研究では、臨床的な心筋梗塞に近いモデルとして心筋の虚血・再灌流モデルを作成し、NF-κBを阻害するpyrrolidine dithiocarbamate(PDTC)を投与してその有効性を検討した。バルビタールで麻酔し人工呼吸を施行した雄のビーグル犬を対象とした。動脈カテーテル、CVPカテーテル、Swan-Ganzカテーテル、膀胱カテーテルを挿入後、左開胸し、冠動脈左前下行枝の血流を30分間遮断した後再灌流することによって心筋の虚血・再灌流モデルを作成した。血行動態(心拍数、血圧、肺動脈圧、肺動脈楔入圧、中心静脈圧、心拍出量、体血管抵抗、肺血管抵抗)、血液ガス(pH,PaO_2,PaCO_2,HCO_3^-,BE)、酸素消費量、酸素運搬量、乳酸値、心筋酵素(CK-MB,troponinI),GOTなどのパラメーターを再灌流後6hrまで経時的にモニターした。対照群(非処置群)と処置群の2群に分類した。処置群として、NF-kBを阻害するpyrrolidine dithiocarbamate(PDTC)を再灌流前に投与し、これら各種パラメーターへの影響を検討した。しかし、血行動態、血液ガス、酸素消費量、酸素運搬量、乳酸値、心筋酵素(CK-MB,troponinI),GOTなどのパラメーターは、両群間で有意差がなかった。
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